無彩色なキミに恋をして。

その声は、隣にいる燈冴くんだった―――


後任の件を引き受けるなんて初耳で
誰よりも最初に、そしてたぶん1番驚いたのはわたし自身。
長身の彼を見上げると、真剣な表情に嘘偽りなんて微塵も感じない。
もちろん冗談だとは思っていなかったけど
まさかそんな事…って。

「いったいどういう事なんだ!?
 秘書のキミが後継者なんて聞いていないぞ!
 そんなの話が違うだろ!」

怒り心頭した鮎沢社長は
さっきの経緯もあったせいか頭に血が昇ったらしく
声を張り上げて怒鳴り散らした。
その顔は真っ赤だ。

対照的に、父はずっと冷静なまま淡々と話を続けた。

「話が違うのはこちらも同じ。
 今後の取引についても今一度、見直しが必要かと。」

どういう話なのか
わたしにはまったく見えなかった。

不正?燈冴くんが次期社長? 
誰がどこまで何を知っているのか
全然わからない。

それは鮎沢社長も同じなよう。

「こんなのは話にならない!
 漣社長、入院している間に頭がイカれたのか?
 少し考え直すべきだ。
 私は失礼する」

最後まで激高しながら席を立ち
『邪魔だ、退け!』と息子を押しのけて
社長室の扉を乱暴に開け放って飛び出していってしまった。

「お父さんも燈冴くんも
 これはどういう事なの!?
 わかりやすく説明してよ!」







 
 






 
 
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