無彩色なキミに恋をして。

3人だけになると父は燈冴くんに『珈琲を頼む』と伝え、ネクタイを軽く緩めながらソファの背もたれに体を預けて、心底疲れたとでも言いたげに大きく息を吐くと、わたしに現状の説明を始めた。

「緋奈星が気になってるようだから簡潔に言うが
 鮎沢社長は自身の会社の金を着服し詐欺を測っている可能性がある」

「そんなのって…
 お父さん、それを調べていたの?」

「あぁ。以前からおかしいとは思う節はあったからな。動揺している様子だったからまず間違いないだろ」

「それが本当だとして、これからどうなるの?」

わたしの質問に父は顎を触り
考え事をしている様子を見せた。

「さっき話したが証拠がないからな。
 あれば話は大きく変わる。
 ウチとの取引も終わる。
 もちろん後継者や婚約も、全て破棄だ」

複雑な思いでわたしも、そして心痛な表情の燈冴くんも父の話に耳を傾けていた。

後継者も婚約も破棄になるのは嬉しかったけれど
こんな形で終わりを迎えるなんて、考えてもいなかったし…信じられるはずがない。

鮎沢さんの事も、心配だしーーー


「燈冴くん、どうして急にこの話を受けてくれる気になったんだ?」

『話を戻すが』と切り出して珈琲を出すタイミングで燈冴くんに話掛けると、彼は背筋をスッと伸ばし父の前でまた一礼した。
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