無彩色なキミに恋をして。
燈冴くんはそれを恐れているんだと思った。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ?
お父さんに怒られるのはわたしだけ。
燈冴くんは何も悪くない―――」
「だからそうじゃない!」
さっきまで冷静だった燈冴くんの突然の発狂に近い声に
わたしは驚いてビクッと肩を震わせ目を見開いた。
視線の先に映る彼は
複雑そうに顔をしかめたまま瞬き1つしない。
何に対してそこまで険悪になったのか
正直わからなくて声を掛けるのも恐る恐るになる。
「燈冴…くん?」
けれど返ってきた言葉は
思い掛けなかった―――
「俺は執事であるけれど
”男”に変わりはない。
緋奈星さまが他の野郎に触られるのを
黙って見過ごす事は出来ない」
まっすぐ瞳を見つめたまま
あまりにストレートな物言いに
わたしの心臓が跳ねた。
こんな燈冴くんを見るのは初めて。
ううん…
”男”の彼を知ったの、初めて―――
「ジュエリーや社長じゃない。
俺が嫌なんです。
撮影1つ、許せない」
これでもかって言うくらい持っていたフィルムをグッと力強く握りしめるから、見ているこっちが痛くなってくるんだけど…
でもそれくらい心配してくれていたんだなって思うと、燈冴くんには感謝ばかり。
「緋奈星さま…」
興奮気味だったのが落ち着いたみたいで
小さく私を呼ぶ。