無彩色なキミに恋をして。

会議の前にもう1度 目を通しておこうと思って鞄から出したのに、免許の事なんて考えていたおかげでそのまま忘れてきちゃったんだ。

取りに戻るにも
鍵は燈冴くんが持っているから連絡しないといけないわけで…

「それが1番イヤなのにな…」

溜め息を1つ零しスマホを手にすると
彼の番号を開いたところで
入り口の方から声がした。

「緋奈星さま」

まさかって驚いて振り返れば
電話をする前に既に来ていた燈冴くん。
その手には車に置いてきたはずの資料が…。

この場にいる全員の視線が彼に注ぐ中
まっすぐわたしの元に歩み寄る姿は
なぜかドラマのワンシーンみたいに見えてくる。

これがこの人の魅力であり
わたしの悩みの1つ―――

「緋奈星さま、こちら
 車に忘れて行かれましたよ」

「あ、ありがとう…」

資料を受け取ってお礼を言うけれど
彼の背後からビシビシと感じる視線が痛すぎて
それ以上の言葉が交わせない。

やっぱり燈冴くんの存在は目立つ。
女性ばかりの社内は
彼によって更に華やかに色づくから。

「どうかなさいました?」

「えッ、ううんッ!
 なんでもないよ、大丈夫!」

チラチラと辺りを気にしていた事に気が付いたみたいで、心配そうにわたしを見つめるから慌てて否定した。






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