無彩色なキミに恋をして。

彼の察しは鋭い…し、早い。
『急に来てしまい、すみません』と申し訳なさそうにしながらも、連絡事項は忘れない。

「緋奈星さまの仕事が終わるのは18時でしたよね?その頃また迎えに来ます」

まわりに聞こえないよう小声で囁いて
こちらの返事を聞かず
ニコリと笑顔を置いて出て行ってしまった。

もちろんその後まわりからは
『社長秘書に甘えている』
『会うための口実でワザとやっている』等々
密かに囁かれていたのは明白。

それもそうよね。
置いていったわたしが悪いんだから。

これを払拭する事は出来ないけれど
しっかりと仕事はしなきゃとは思ってる。

さっそく資料を車に忘れたけど…。



夕方18:00ーーーー

キリ良く仕事が終わったわたしは
迎えに《《来られる前》》に駐車場に向かおうとエレベーターを待っていた。

…と、ちょうど開いた扉の先には先約がいた。

それが、そう。
燈冴くん…。

「緋奈星さま
 お疲れ様です」

朝から夕方までこうもタイミングが良すぎると
わたしは彼にGPSでも取り付けられているんじゃないかって思う。
さすがにそれはプライバシーの侵害だけど。

「ちょうど良かった。
 私も今から緋奈星さまのところに行こうとしていたので。」

うん、そうだと思っていたよ。
だから先手を打ったはずなのに。




< 29 / 232 >

この作品をシェア

pagetop