無彩色なキミに恋をして。

結局、車まで一緒に行く事になっちゃった。

日中の明るい時間帯でも薄暗い地下駐車場は
夜は完全に光を失いオレンジ色の蛍光灯のみで照らされ、静寂に包まれた無音の空間。

唯一響く燈冴くんの革靴とわたしのハイヒールの音を耳にしながら、停めてある社長専用車に到着した。

「そういえば…
 今朝は突然どうしてあんな事を言ったんです?」

鍵を開けてもらい助手席に乗り込むんだとほぼ同時に、なぜかそんな質問。

「あんな事…って?」

シートベルトをしながら考えてみたけれど
燈冴くんに何を言ったか覚えてないな。
そもそも会話をしたっけ…?

「車の免許の事ですよ。
 言っていましたよね?
 『取ろうかな…』と。」

「えッ!それ聞こえてたの!?」

小さい声で独り言で言ったつもりだったのに
(父には聞かれていたけれども)
運転していた彼の耳にまで届いていたなんて・・・
地獄耳ッ!

「それはつまり
 私の運転がご不満と?」

若干怒っているのかも。
言い方も含めて横顔が不機嫌そうに見える。

「そ、そうじゃないけど…」

運転が不満ってより
今もそうだけど2人きり(この状況)が何かと気まずいんだよ…。

「ほ、ほら!
 燈冴くんも毎回大変じゃん?
 仕事が残っているのに
 わざわざわたしの送迎までしなきゃいけないなんて…」

だから苦し紛れの言い訳。
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