無彩色なキミに恋をして。

でもそれも一理あって。

いつも父の仕事が終わる時間はわたしよりも全然遅いから、先に燈冴くんが家まで送ってくれる。
そしてまたその足で会社に戻っているんだから面倒なはず。

忙しいのに何度も往復なんて
普通に考えても嫌でしょ。

そういうのも理由としてはあるんだけどーーー


「その心配なら無用ですよ。
 社長のお側に四六時中いる訳ではないので時間も空きますからね。
 それに決してそんな風には思いません。
 なんなら嬉しいくらいです」

嬉しいって…


たったその言葉だけなのに
赤信号で停止してわたしの方を向いて言うんだもん。
いちいちドキッとしちゃう。

「こちらが大丈夫で緋奈星さまがご迷惑でなければ、特に問題ないですよね?」

「え…うん…」

上手く丸め込まれた気がする。
涼しい顔して言うことズルい…。


先日のキス(未遂)の事と言い
燈冴くんは何を考えているのかな…

そんな事ばかりが気になって
だけど聞くに聞けなくて
無意識に彼の方に目がいってしまう。


「まだ何か気になる事でも?」

「えッ!?」

運転しながら声だけ掛けられて
つい大きな声を出しちゃった。

驚くわたしの意図を察した?

「隣でそれだけ視線を送られたら
 さすがに気付きます」

もしかして単純に
わたしの行動がわかりやすかっただけ?
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