無彩色なキミに恋をして。

話をしている間に
気付けば自宅まではもうすぐ。

到着は目前だけど
わたしにはもう1つ気になった事がーーー

「燈冴くんって
 どうしてお父さんの秘書になったの?
 執事まで兼任してるけど…
 キッカケは何?」

「なんですか、急に。」

「いや…聞いた事ないなと思って…」

確かに《《急に》》なんだけど
長いこと一緒にいるのに知らなかったから。


すると燈冴くん
『そうでしたっけ?』と軽く首を傾げて誤魔化すように答えた。

「キッカケなんて、ごく普通ですよ。
 就職先が秘書兼執事だっただけで
 特に理由はありませんし」

「そう…なんだ」

…それ、”普通”なの?
他の職業ならわかる気もするけれど
秘書と執事ってそんな理由でなれるものなの?

「その答えだと納得いきませんか?」

わたしの反応が薄かったからか
彼にもそれは伝わっていたみたい。
運転しながらチラッとこちらに視線を移すから
複雑に首を斜めに振って曖昧に返事をすると
少し観念したように話を続けた。

「就職先が秘書だったのは事実です。
 執事は私自らが希望しお願いしました。
 それは…」

燈冴くんは言いづらそうに一瞬、話すのを躊躇った。

ちょうどタイミング悪く自宅に到着。
正面玄関に車を横付けされ
それと連動するように自動で開く鉄の門扉。
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