無彩色なキミに恋をして。

それは即ち
話の終了を意味してるって事。


あ〜ぁ
まだ途中だったのにな…


心の中で溜め息をついて残念な気持ちで渋々鞄を持ち、降りようと車のドアハンドルに手を掛けると。

『緋奈星さま』

燈冴くんがわたしを呼ぶ。

「俺は…」

「ん?」

「…社長に拾って貰った」

「拾う…?」

「今の俺があるのは、あの人のおかげ。
 だからその恩返しをしないといけない」

「燈冴くん…?」
 
わたしと目を合わせるその瞳は
色を失ったように、とても冷たい。

“拾った恩返し”
何かトクベツな理由があるように聞こえるけれど
彼がそれ以上詳しく話さない事は知っているから
わたしも追究しない…し、出来ない。

「では私は仕事に戻りますね」

色味のない瞳は変わらないまま
彼はそう言って微笑むから
嫌でも話は終わり。



「燈冴くんって
 やっぱり謎…」
 
門扉の前で走り去っていく燈冴くんの車を目で追いながら、わたしは改めて深く感じたんだーー





    【あなたの事が知りたいです。終】







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