無彩色なキミに恋をして。

「緋奈星さま、ご安心を。
 私も一緒に行きますので。」

疑問に思っていたわたしの意図を察したのか
燈冴くんは父に珈琲を淹れながら
フォローの言葉を掛けてくれた。


・・・って、ちょっと待って?


「燈冴くんも一緒って!?」

今朝一番の驚きだ。
だって…
燈冴くんも行くなんて
それって2人きりって事なんじゃ――――

「今回は支店への視察も兼ねている。
 燈冴くんにはそちらをお願いしているからな」

父が説明を続けているけれど
わたしはそんな話を冷静に聞いている余裕はなくて
頭も心も動揺ばかり。

3日も県外って
”泊まり”なのは言わずとも知れた事。
その間わたし達は2人きり。

”住み込みで執事をしているから
 そこには抵抗がない”

そう思っていたけれど
それはあくまで《《父がいる》》前提。
今回は違う。
そもそも2人で出掛けた事もないのに…

あ・・・それもそうよ。

「お父さんの方は良いの?
 燈冴くん、社長秘書だから3日も離れたら仕事大変じゃない?」

彼の立場を思い出したわたしは
そのまま父に訊ねてみた。

すると案外
返答はバッサリ。

「私も自分の仕事を終えたら駆け付ける。
 2日目には合流する予定だ」

「あー…
 そう…だよね」

3日も秘書不在なわけがないか。
意味なくなっちゃうもんね。


そして父も来るんだ…





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