無彩色なキミに恋をして。
パーサー(客室乗務員)を呼ばないで自分で行くなんて
こんな時でもさすが執事。
…って、そんな呑気な事を考える余裕はあるなんてね。
手渡された薬を水で流し込むと
自然と燈冴くんが手を出してくれるから
またさすがだなって思う。
「隣に座っても?」
「え、うん…どうぞ」
『では失礼します』と謙遜しながら隣の席に座るから、その近さにドキッとする。
顔なんて直接見られなくて
窓越しに少し映る姿にチラッとするだけ。
基本的に、彼は座席や歩く位置はわたしや父とは距離を空けている。
本人曰く『秘書・執事としての最低限のマナー』だそう。
だからさっきまでは斜め前に座っていたし・・・
なのにじゃぁ、なぜ隣に…?
「膝枕、しましょうか?」
「えッ!?」
疑問に思っていた答えがすぐに返ってきたけれど
突然の爆弾発言に
車酔いも忘れるくらいに驚いて声を上げて燈冴くんの方を向いた。
「少し横になった方が良いかと思いまして。」
真剣な顔で『さぁ、どうぞ』なんてさらりと言いながら、自分の膝の上にブランケットを敷いている。
「そ、そんなことしなくても大丈夫だよ!
薬も効いてきたみたいだし、もう全然平気!!」
思わず全力で拒否してしまった。
だって燈冴くんの膝枕なんて
とてもじゃないけど眠れるわけがない。