無彩色なキミに恋をして。

「急に話しかけたりしてごめんなさい…」

大丈夫ですか?と念のため問い掛けると
目を合わせず俯き加減に『あ、いえ…』と微妙な返答だけが返ってきた。

その反応で確信した。
やばい…いきなりやらかしてしまった、って。
誰にも邪魔されずに静かに集中したい人だっているのに、わたしは空気を読まなかったんだ。

だからこれ以上は話を広げられないと判断したわたしは、自分から声を掛けたにも関わらず『ゆ、ゆっくり見ていってください』と苦笑いを浮かべて、半ば逃げるように後ずさりした。


だけど予想外だったのは
彼女の方から発せられた言葉。

「あ、あのッ!
 教えてほしい事があります!」

少し躊躇い気味に迷った様子ではあったけれど
意を決して、と言うのかな。
メモ帳を握りしめながら呼び止められた。

どうやら聞きたい事は色々とあったみたいなんだけど、なかなか言い出せなくて困っていただとか―――



「ウェディングドレスデザイナーの勉強を?」
 
場所を店内端のテーブル席に移動して
対面する彼女から改めて話を聞いたわたし。

名前は”元宮(もとみや)みこと”さん。
わたしと同い年で大学に通う学生との事。
さっきはとても真剣にメモを取っていたから顔もほとんど見られなったけれど、よく見ると凄く可愛い。






< 45 / 232 >

この作品をシェア

pagetop