無彩色なキミに恋をして。
だけど本当の事は言えない。
お客様には
・本社から勉強がてらに出張で来ている事
・父がこのジュエリー会社の社長である事
・自身の身分を明かさない事
問題や揉め事が起きないように
これらを口外しないよう
燈冴くんから厳しく口止めされているから。
だから伝えるとしたても。
「アルバイトでして…」
…なんて嘘をつくしかない。
ごめんなさい、元宮さん。
それから
どのくらい話し込んでいたんだろう――――
「こちらにいらしたんですか」
自分の仕事を終えた燈冴くんが戻ってきて初めて時計を確認し、2時間も経っていた事を知った。
「嘘ッ!こんなに長く喋っていたんだッ
ごめんなさい、元宮さん!」
慌てて椅子から立ち上がり
話を切り上げたのは良いけれど
当の本人はどうしてかその場から動かない。
…というか
なぜか燈冴くんの顔を見つめたまま恍惚としているようにも見える。
「元宮さん?」
「えッ、あ!すみません!
なんでもありませんッ」
どうかしましたか?と呼び掛けると
ハッとしたように今度はわたしに顔を向け
フルフルと首を横に振ってぎこちなく否定。
すると…
「あ、あの…漣さん
この方は…」
目だけチラリと燈冴くんに向けるから
どうやら知りたかったみたい。
「彼はわたしの執―――」
「上司です」
あ、燈冴くんに口を挟まれた。