無彩色なキミに恋をして。

なんとなく嫌な予感がして恐る恐る顔をあげると
案の定、燈冴くんのキリっと鋭い眼差しが光る。

これは間違いなく怒っているな…
わたしが”執事”って言いそうになったから。

「上司…なんですか…?」

「はい。
 《《漣》》は僕の”部下”です」

うわー…やっぱり怒ってる。
改めて言い換えるあたり絶対ワザとだよね。

”早めに解散しないと後で説教される”
そう思ったわたしは『じゃぁこの辺で…』と終わりを告げると。

「ではまた明日(あす)
 デザイン画を持ってまた来ますね!」

満面の笑みを浮かべながら
元宮さんは嬉しそうに鞄を抱えて店をあとにした。

控えめに手を振って別れたわたしだけれど
内心ドキドキで―――


「緋奈星さま?
 随分とお客様と仲良くなったようで。」

燈冴くんの冷めた声色と笑顔の伴わない瞳に
顔が引きつり背筋も凍り付く。

「えっと…」

「それも明日の約束までしていたようですが?」

「それはその…成り行きと言うか…」

彼の言葉の重みに
少しずつ顔を背けて小声になっていく。

言いたい事はよくわかっている。

「緋奈星さま。
 こちらには何をされに来たかわかっていますか?
 遊びに来たわけではないんですよ?」

「はい…」

さっきまで元宮さんが座っていた席に腰掛けた燈冴くんからの、ドライな説教を受ける羽目に…。


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