無彩色なキミに恋をして。
この時のわたしはまだ
あんな事が起こるなんて考えもしなかった。
そんなの
ほんの少しでも予想が出来るはず、ないのだから――――
ー 16:00 ――
1日目である今日の視察が終わり
わたしと燈冴くんは支店の方々へ挨拶を済ませて外へと出た。
「そろそろホテルからの迎えの車が来ますので
もう少しお待ちください」
燈冴くんは腕時計を確認しながら
わたしはその隣で車を待つことに。
支店の位置する場所は
ちょうど車が通る大通りに面しているから
タクシーや自家用車が停めやすい。
これも多くの方に来てもらえるようにとの考えがあるらしい。
「空…暗くなってきたね」
午前中まで晴れて青空が広がっていたのに
今はどんよりとした曇天に覆われている。
次第にポツポツと大粒の雨までーーー
「降ってきましたね。
緋奈星さま、寒くはありませんか?」
「うん、平気」
こういう時も優しく気遣ってくれる燈冴くん。
支店の出入り口の屋根の下で
車を待っていたわたし達。
少ししてホテルからの迎えが店の前に横づけされ
後部座席側から乗り込もうとする寸前で
どこからかの『漣さーん!』と呼ぶ声に反射的に顔を上げた。
元宮さん?
乗る事を1度ストップし声のする方に顔を上げると
支店の前、道路を挟んだ先に傘をさした彼女の姿が。