無彩色なキミに恋をして。
その人物は
わたしのすぐ隣を通り過ぎていく。
「燈冴くんッ!?」
彼だとわかった次の瞬間
目の前に起きた出来事に
わたしは両手で口を覆った―――
大きなクラクション
急ブレーキの掛かる音
さしていた傘が宙を舞い
雨で濡れている地面に体が叩きつけらる衝撃音
トラックが元宮さんを轢きそうになるその一瞬の間に、燈冴くんが飛び出して彼女を抱えて回避。
その時に自身の体をクッション代わりにして地面に滑り込んだみたい。
何が起きたのか理解した時には
燈冴くんが元宮さんを抱き込むようにして路肩に倒れ込み、少しの間2人とも動かない。
「燈冴…くん…」
急激に襲ってくる恐怖に震えながらも
ゆっくりと2人に近寄っていき
トラックの運転手さんも慌てて車から降りてきて
周辺では何事かとザワザワし始める事態の中
倒れていた2人に動きがあった。
「怪我は…?」
「だ、大丈夫です…」
彼の腕の中で驚きと困惑で戸惑いを見せる元宮さん。
燈冴くんと目を合わせず顔を真っ赤にして首を縦に振っている。
2人とも意識はハッキリしているように見えて
わたしも少し安心した。
だけど1つ違和感が――
「…ッ」
元宮さんと一緒に体を起こした燈冴くんが
一瞬、苦しそうに顔を歪めた。
「どうしたの…?」
「なんでも…ありません…」
そんなはずはなかった。