無彩色なキミに恋をして。
「ところで緋奈星。
今晩は19時からだが…
忘れてはいないだろうな?」
朝食のバゲッドを食べる手を止め
父の質問に『へ?』と間抜けな声をあげ
唖然といている顔を見ながら瞬きを数回。
今晩19時…って
なんだっけ?
「まさかお前…
覚えていないんじゃ…」
『情けない…』と額に手を当てながら
首を横に振る父に申し訳ないが
えぇ。期待通りのその《《まさか》》よ。
「緋奈星さま。
今晩はお披露目パーティーがあると
先日から私は何度も申し上げていましたよ?」
「そう…だっけ?
あははぁ…全っ然忘れてたわぁ」
ヤバいと思い
目が泳ぐ。
改めて言われてもあんまりピンと来ないくらいだ。
たぶんわたし、人の話を聞いていないって事だと思う。
「「はぁ〜…」」
燈冴くんと父の溜め息がピッタリ。
余程呆れているのはわかるよ。
「頼むからしっかりしてくれ。
新作発表に合わせて緋奈星を皆に紹介する大事なパーティーなんだぞ」
「紹介って…
えッ、まさかわたしも登壇するの!?」
「当たり前だろ。
お前に新作ジュエリーを身につけてもらうのだから」
「うわ、最悪…」
思わず本音が溢れてしまった。
小声で呟いたつもりだったけど
隣にいる燈冴くんの耳にはしっかり入っていたようで『緋奈星さま、声』と注意を受けた。