無彩色なキミに恋をして。
大きなパーティーは日常茶飯事みたいなところがあって、新作の発表場は金持ちだけではなくバイヤーが集まる大事なイベント。
わたしも子供の頃から付き合わされていたから
場慣れはしているけれど…
「本当にやらなきゃダメ?
大人達の真ん中で注目を浴びるのって
あんまり好きじゃないんだよねぇ…」
「何をまたそんな弱気を。
もう何年も経験なさっているでしょう?
これも緋奈星さまの立派なお仕事なのですから
しっかりしてください」
「燈冴くん厳しすぎ。
だんだんお父さんに似てきたんじゃない?」
嫌味を言うわたしの事なんてお構いなしに
午後には強制的に屋敷内のドレッシングルームへと連れてこられてしまった。
待ち受けていたのは
着替えやメイクを担当してくれる2人の女性お手伝いさん。
「ドレスコードをお願いします」
彼の合図に2人のお手伝いさんは首を縦に振り
さっそくと言わんばかりに張り切って衣装の用意を始め、指示した燈冴くん本人は『また後ほど伺います』なんて笑顔で去っていく始末。
あとはもう
されるがまま。
セミロングの髪をアップに留め
目元・唇にはピンク系のメイクを施し
イブニングドレスはペンシルラインのシルク素材、足元が隠れるくらいの長さに色は濃い青で決められた。