無彩色なキミに恋をして。
こんな風に1日の電源をOFFに出来ればいいのになって、今日ほど思った日はない。
『お疲れ様でした』と
すれ違う職員に挨拶を交わしてビルの外へと一歩出ると、18時すぎの空はもうほとんど暗く
車のヘッドライトの明かりが際立つ。
今日は父の運転で出社したけれど
帰りが遅いからわたしだけ先に帰らないといけないから、すでに呼んでおいたタクシーに乗り込み家路に着いた。
到着して鞄から鍵を取り出して、ふと気づく。
「そっか…鍵、開いているんだっけ」って。
普段は家の前で車を停めて
中に入るのはわたし1人だから鍵は必要だけど今日は違う。
すでに開いていた玄関へと入り靴を脱ぐと
キッチンから焼き魚の美味しそうな香りが漂い
自然とお腹が鳴った。
いつもの夕飯は午前中に燈冴くんが準備をしといてくれたり
彼が忙しいときは自炊したりして食べているから
こんな風に「今日の夕食は焼き魚なんだ」って実感するのは珍しい。
ハウスキーパーさん達は時短のため
午前中だけ除と洗濯をしたら帰ってしまい
今の時間はもう、家には燈冴くんだけ。
だから料理の匂いがするって事は――――
「おかえりなさいませ、緋奈星さま」
ダイニングルームに真っ直ぐ向かうと
やはり思った通り
燈冴くんが食事をテーブルに運んでいた。