無彩色なキミに恋をして。
今朝までしていた右肩の三角巾はもうなくて
何事もなかったように普通に動かしているし
至って不自由そうな様子もない。
「怪我はもう大丈夫なの!?」
何よりも真っ先にその事が気になったわたしは
彼の傍に駆け寄り腕の心配をしたけれど
本人は「まったく問題ありませんよ」と上下・左右に動かして”大丈夫”と見せてくれた。
今日 もう1度病院を受診した際
治りが早く固定も外してもらえたみたいで
仕事復帰の許可も下りたらしい。
そこまで長引かなかった事に本人も心底ホッとしたみたいで、言葉にはしないものの安堵の表情がそれを示していた。
責任感のある人だから
少なからず焦りはあったんだと思う。
・・さて。
怪我は良かったとして
《《例》》の話を忘れてはいけない。
「あ、のさ…燈冴くん」
鞄を椅子の上に置き
隣の席について一呼吸を入れてから
『元宮さんの事なんだけどさ』と本題を切り出した。
わたしがあまりに緊張した様子で話始めようとするからか、燈冴くんも空気を察してくれて
食事を運ぶ手を止め、正面の椅子を引いて座り
『会いたいんだって』と概ね“事”の説明をすると
彼は至って冷静に首を横に振った。
「申し訳ありませんが仕事が忙しいので、場を設けてお会いすることは出来ません」
思った通りの返事に
少しだけ緊張が解けた。