無彩色なキミに恋をして。

やっぱり燈冴くんは
“ただ会いたい”に時間を費やさない人。
『お詫びも兼ねている』ことも念押ししても。

「謝罪の気持ちだけで十分です。
 わざわざお会いする必要はないかと。」

「そ、そっか…」

「私はあくまで
 緋奈星さまをお守りしただけの事。
 彼女のためではありません」

わたしにとっては本来は嬉しいはずのセリフだけど
表情1つ変えずに淡々と吐く本音に
燈冴くんの”冷酷”な部分が直接的に表れていて素直に喜べない。
どうしてそこまで拒絶するのかと思ってしまうから。

「彼女とは改めて約束などはしませんが
 もしどこかでお会いするような機会があれば
 私から直接お伝えしますので
 緋奈星さまのご心配には及びませんよ」

俯いたわたしに
『言うなら自分で言ってよ』と思ったのかもしれない。
もちろんそんな風には考えていなかったけれど
もしそう思った言葉なら…
それもそれでズキッと刺されるものがある。

「食事にしましょう」

ニコリと、またいつもの執事の顔に戻った燈冴くん。
『先に着替えてきてください』と言いながら席を立ち、キッチンへと姿を消す。

どうしてだろう。
今朝のキス(あの話)にも触れて来なかった。

わたしが”熱のせいで”と言ってしまったから?
自分でムリヤリ完結させてしまったけれど
あの答えが本当に、ホント…?







< 76 / 232 >

この作品をシェア

pagetop