無彩色なキミに恋をして。
季節は秋から冬へと切り替わり
薄手のコートが厚手のものに
マフラーを巻く時期になってきて
またいつもと同じ日常が始まる。
朝は6時半に1人で起きるようになり
用意してもらった朝食を父と無言で食べ
燈冴くんの運転する車で出勤。
あいかわらず社内の空気に馴染めず
冷ややかな目や淡泊な態度で業務に支障が出る事も暫しあるけれど、盛大に虐められているわけじゃないのだから、それだって何も変わらない生活の1つ。
それが1番
平和だと思っていたのは、今日まで―――
「漣さん!」
平日の仕事終わり。
燈冴くんの運転で家まで送ってもらうわたしは
車を地下駐車場から入り口にまわしてくれるのを、会社の外で待っていた。
するとそこに
『また来ちゃいました!』ってポニーテールを揺らしながら駆け寄ってきたのは、例の彼女。
「元宮さん?
どうしてここへ…」
偶然?それとも狙っていての必然?
わたしが会社を出たタイミングにピッタリだったから、既に待ち伏せていた?と疑いを持ってしまう。
「たまたま通りかかって。
あ、もしかして漣さん
今仕事終わりですか?」
彼女の視線の先は
わたしが肩に掛けているバッグ。
時間も時間だからか
帰るところだと、ほぼ確信したような言い方に
躊躇いつつも黙って頷いた。