無彩色なキミに恋をして。

穏やかな言葉遣いなはずなのに
優しさの破片(カケラ)もない。

燈冴くんの対応は
いつだって、白か黒。
期待させる発言は
嘘でも絶対にしない。

そういう人だって、よく知ってる。


強制的に話を終わらせたところで
燈冴くんのスマホに着信が入った。

「すみません、少し失礼します」

会釈をすると彼はスマホを手に運転席へと戻ってしまい、残されたわたしと元宮さんの間に残るのは微妙な空気だけ。

「私は…嫌われてしまったんでしょうか」

燈冴くんからの言葉が余程ショックだったらしく
立ちすくんだまま俯く彼女が少し可哀想に思えて
『そんな事ないよ』なんて無責任に答えるわたしは、偽善者かもしれない。

「燈冴くん…お父さんの秘書もだけど執事も兼任しているから、いつも忙しいんだと思う」

だから本当の事を伝えたら少しは気持ちが楽になるのかなと、軽い気持ちで言っただけだったけれど…
彼女の口からはわたしの想像とは全然違う反応が返ってきた。

「執事もだなんて…
 彼、可哀想…」

「え…?」

「だって、執事って事は平日も休日も関係ないんですよね?
 日中は社長様の秘書として働いて
 家では更に執事として働くなんて…
 じゃぁ彼はいつ休んでいるんですか?」

「それは…」

「彼のプライベートはあるんですか!?」

くるりとこちらに振り返り早口で捲し立てられ
思わずビクッと肩が震えた。
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