無彩色なキミに恋をして。
すれ違う心の距離。
ーーーー12月
クリスマスが近いからか
この時期、わたし達の会社は忙しくなっていた。
老若男女
様々な目的で購入されるジュエリーは
多くの人の手に、心に“幸”を与える。
そして1人1人
誰もが特別な日になる。
きっとわたしも
そして燈冴くんにもーーーーー
「…ごちそうさま」
いつもと同じ朝
燈冴くんが用意してくれたエッグベネディクトにスープとサラダはほとんど手をつけられず、食べられたのはクロワッサン一口のみ。
「なんだ、もう食べないのか?」
「今朝はお腹が空いてなくて…」
無表情で食べ進める父と
何か言いたそうな燈冴くんの視線を感じながら
『ごめんなさい…』と席を立った。
あれからずっと考えていて
それなのに元宮さんに言われた日から
何も変わっていない罪悪感に
この頃、あまり食欲が沸かない。
燈冴くんとは目も合わせられず
会話は要件だけで距離を置いて避けている。
「しばらく外回りがあって
終わったらそのまま帰るから…
だから送らなくて大丈夫」
『行ってきます』と逃げるように出て行くんだから
太々しい態度だよなとは自分でもよくわかる。
“外回りで直帰”だなんて、嘘。
初めからそんなのない。
燈冴くんの仕事を減らす様に
ほんの少しだけど、わたしに出来ることを考えた結果だから。