無彩色なキミに恋をして。
外の冷たい風に当たりながら
頭も冷やしたかった。
燈冴くんが彼女と会ったとしても
わたしが《《とやかく》》言うことではなないし
それは返って良い事のはず。
彼が選んだ選択に
わたしが口出す資格なんて、ないのだから。
それに何より
燈冴くんから離れようとしているのは
むしろ、わたしの方。
父の秘書と執事であっても
《《わたしからは》》離れるべき。
そう決めたのは、自分自身。
って…
頭では理解しているはずなのに
心がモヤモヤする。
気持ちが沈む。
なんとなく
今まで感じなかった”離れていく感覚”があるから。
「はぁ…」
吐く息が白く空に消える。
12月の夜風は
体だけじゃなくて
心まで冷たくしていく――――
誰もいない家に到着したときには
時計が20時をまわっていた。
タクシーだと数分で着く距離でも
やっぱり歩きとなると時間が掛かるし
感傷的になっていると歩みはゆっくりになるから、尚更。
いつもと同じように燈冴くんが用意してくれた夕飯が冷蔵庫に入っていて、何も考えていなかった時のわたしは、それを”当たり前”とレンジで温めて食べていた。
だけど、今は”そうしたい”と思えない。
執事である燈冴くんの負担になるって
こういう事なんだろうなって知ってしまったから。
甘えちゃいけない…