冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
第6話 ひと目惚れの瞬間
不快に感じるものは、いつも人だった。
研ぎ澄まされた思考と試行を重ねAIを作る。その結果AIというものは指示通りに動くのに、期待以上の学習をする。
人と向き合うよりも楽で、未来を感じた。
資金を得るために株式会社にしても、俺を邪魔するのはAIではなく、いつも人だ。自分の造り出す世界に人はいらない。評論家の一部は俺のやっていることと人間性を過激に否定するが、そんなものを聞く気はなかった。
『ホテルトロイメライ東京』。
外界の空気寄せ付けない、時が止まった空間を演出している見慣れたクラシックな内部。外観は入場するときに目にするのみで、ここから出るときに振り返ったことはないから記憶にない。
洗練されているのだと思う。その証拠に、建物のどれをとっても俺を不快にさせることがなかった。
この日は違和感があった。モーニングコーヒーをしている俺の視界に、胃がもたれそうなクリームまみれのパンケーキがちらちらと入ってきた。