冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「癖になっている」
彼は唇を指でなぞってそう呟く。
寝顔が恥ずかしいから控えてもらいたいが、その寝顔を見てキスがしたいと思ってもらえるなんて幸せだ。
「続きはしなくていいんですか?」
だからちょっと大胆なことも言える。
期待したとおりに私に視線を向け、逃がさないと言いたげに目を細める。
「……そんなことを言われたら、キスだけじゃ済まない」
せっかくスリーピースのスーツを着たのに、彼は再びネクタイを緩め始めた。
* * *
瀬川さんは情報番組の収録へ行ったため留守にしており、残された私は懲りずにパンケーキの試作をする。
手際よく手伝ってくれるジータは、お店を出すときに雇いたいと思うほどだパンケーキ作りが上達している。さすが瀬川さんの作ったAIだ。
『あのー、芽衣さん』
「はーい?」
ボールの中の大量の粉へ卵を割り入れながら、私をつついてくるジータにニヤけた顔を向ける。