冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「まかせてジータ! 瀬川さんは教えてくれなかったかもしれないけど、私はたくさん教えてあげちゃう」
いつかジータと恋バナなんてできたら素敵だなぁという呑気な考えだった。
しかしジータは、
『いえ、ご主人はけっこう愛情深い人ですよ。ずっと心に想っている女性がいらっしゃるようですからね』
と答え、目玉焼きを皿へ移した。
「……え?」
とんでもないことを聞いた気がし、生地をかき回す手を止める。
『失礼しました。これは芽衣さんに話してはいけないことでした』
「なにそれ。なんのこと? 心に想っている女性って……私のほかに?」
『はい。ずっといます。……ああ、ダメですって、やめてくださいよ。質問されると答えてしまいがちなんです。私、もう黙りますからね』
ジータの液晶の青い光は、大きなバッテンに変化した。
それから「ねえどういうこと?」と話しかけても〝ブブー!〟というブザーが鳴るだけで、なにも話してはくれなかった。