冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「……そんなことないです。始まりはたしかにビジネスだったかもしれないけど……私は……瀬川さんが好きで……瀬川さんもきっと今は……」

自分に言い聞かせるように言葉を絞り出す。
瀬川さんもきっと今は私のことが好き。そう唱えた。

すると桐生さんは、厳しい顔にさらに鋭いものにし、

「おい今、ビジネスっつったか」

と低い声で責め立てた。

しまった。そこは秘密にするはずが、つい口が滑ってしまった。口もとを押さえるがもう遅く、桐生さんは乱暴に立ち上がった。

「あっ……」

「やっぱりな。おい、あのホテルのパパラッチは本物だったんだろ。一晩遊ばれたところを撮られて、アイツは体裁のために結婚した。違うか?」

「……ち、違います……遊ばれてません……たまたま同じホテルにいたところを、撮られただけで……」

「アンタこういうの下手だな。じゃあやっぱり、写真を撮られたときは婚約者じゃなかったってことじゃねぇか」

わ、本当だ。私のバカ……!


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