冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「……瀬川さん」

「そんなところに座っていて寒くないか。ソファに座って。ジータ、なにか淹れてきてくれ」

『んもう、ご主人たら人使い荒いんですから』

「人じゃないだろ」

いつもなら微笑ましく聞いていられたふたりのやりとりも心に重くのしかかる。
私に秘密にしている、瀬川さんの大切な人のことを、ふたりきりで話していた。

耐えられそうにない。瀬川さんに愛される幸せはいつか消えてなくなるだろう。

瀬川さんもきっと、私へのひと目惚れなど取るに足らない出来事だったのだとすぐに気づく。

「……瀬川さん」

「どうした。芽衣、顔色が悪い。……泣いていたのか?」

手を取って立たせソファへ促してくれたが、私はそれを拒否した。

「芽衣?」

「瀬川さん。……別れてください」

ジータのお茶を淹れる手が止まり、キュインと音を立てて青い光がこちらを向いた。

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