冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
最終話 パパラッチ
「まあまあ、そう落ち込むなって奥さん!
あ、もう奥さんじゃなくなるのか 」
「……暇なんですか、桐生さん」
桐生さんは「フレックスだからな」と昨夜と同じく得意気に答えた。
昨夜、瀬川さんに別れを告げてマンションを出てから、ビジネスホテルに一泊して『くりぃむの森』へ出勤した。
店内では一歩動くたび、「不倫女」と誰かがボソッと呟く声がする。
店長と響子さんはすぐに信じてくれたけど、ネットで拡散されてしまってはしばらく続くだろう。
瀬川さんと別れるのだと決意すると、もうどうでもよかった。
誹謗中傷されるのは苦しいけど、それは私とともに瀬川さんが悪く言われてしまうから不安になっていた部分が大きく、これからは私だけが対象になるのだと思うと自暴自棄になる。
「しかし、撮られるとは思ってなかったな」
「よくここに顔出せましたね。また撮られるんじゃないかとか思わないんですか」
「まぁ、そのときはそのときだな」
桐生さんは瀬川さんに悔しい思いをさせたことが面白くてしかたないのだろう。
それに腹を立ててもしかたがない。写真がなくても、私はきっと幸せにはなれなかった。