冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

ジータと喧嘩をする瀬川さんの頬は赤く染まっている。
理由を話すのが照れ臭いのだろうか。

瀬川さんの大切な人は、お母さんだったんだ。
人を遠ざけてAIにすべてを費やしたのは、お母さんに会いたかったから。

瀬川さんはそれを誰にも話したくなかったかもしれない。恥ずかしいと思っているのだろう。

でも、私はそうは思わなかった。
うれしくて涙が止まらない。

瀬川さんのことがわからなかったけど、今やっとわかった気がする。
愛の言葉をたくさんかけてくれたけど、瀬川さん自身の話をしてくれるのがなによりうれしい。
やっと、瀬川さんとわかり合えた気がする。

「……瀬川」

ポツリと漏れた声の方を見ると、隣で立ち尽くしていた桐生さんもじっと瀬川さんを見つめていた。

「……知らなかった。アイツって、あんな顔するのか」

「はい。瀬川さんは、損得だけで動く人じゃないです」

「……そうだな」
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