冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
* * *
一週間後の午前九時。表参道にあるカフェ『くりぃむの森』に出勤した。
朝のラッシュが落ち着き、歩道に連なる飲食店がのれんや看板を次々に出し始める。
『くりぃむの森』は白い建物にレモン色のオーニングという、ここでは少し目立つ外観をしており、それは並木の四季の移り変わりによって印象を変える。
今は五月の終わり。並木は緑が生い茂り、お店もまるでミントの乗ったレモネードのように爽やかだ。
午前十時からの開店だが、私は一時間早く出勤して仕込みを手伝うことになっている。
「おはようございます!」
白いドアを開けると、取り付けられたベルがカランカランと鳴った。
森を連想するような葉の茂る植木がそこかしこに置かれた店内は、これまた白いテーブルにクリーム色のソファ、木製の食器などのアースカラーで構成されている。
「おはよう、芽衣ちゃん」
「おはよう。今日も早いね」
出迎えてくれた白いワイシャツにブラウンのパンツのお揃いのふたりはここの店長と奥さまで、私の憧れ、藤原さんご夫妻だ。