冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

開店すると、そわそわした気持ちを押し込めて接客に集中した。十種類から選べるパンケーキにドリンクがついて千円から千五百円のメニュー。決して安くはないが、レベルの高さにリピーターが続出している。

忙しくしているとあっという間にピークを過ぎ、午後一時となった。
午前中に店長が昼休憩をとり、午後は混み具合を見て響子さんと私が交代で休憩をとることになっている。

「芽衣ちゃん、お昼どうぞ」

響子さんが私に声をかけると同時に、目玉焼きとベーコンが乗ったパンケーキを木製トレーに乗せて手渡してくれる。ここにちょっとだけメープルシロップをかけ、サラダと紅茶をセットにするのが私のお気に入りのまかないメニューだ。

「ありがとうございます」

エプロンを外し、トレーを持って控え室へと移動する。ひとりで「ふう」と息をつき、ソファに座った。

『それでは、本日のコメンテーターは瀬川慧さんです。瀬川さん、よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

ギクリとし、顔を上げた。聞き覚えのある名前、そして声。点いたままだった事務所のテレビから、お昼の情報番組が流れていた。忙しさで一瞬忘れていられたのに、朝に受けた衝撃が甦る。
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