冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
第2話 かりそめ妻になる
そんな非現実的なことが繰り広げられていても、午後の仕事はなんとかこなした。
いや、こなせていたのかは正直怪しい。店長たちと会話をした覚えがないし、どんなお客さんが来ていたのかもまったく記憶に残っていない。
最後のお客さんを見送ると、ガラスの外に見える空は暗く、遊歩道の夜の灯りが点り始めていた。
昼休憩から閉店である午後七時まで、あの瀬川さんの視線が頭から離れなかった。
射るような眼差しと、『待っていてください』という私に向けられたものではないのに胸に響いた言葉。
「お疲れさま、芽衣ちゃん。明日はお休みなんだし、少し早く帰って大丈夫よ。なんだか疲れてるみたいだもの」
テーブルの除菌をする私に、冷蔵庫のフルーツの在庫を確認していた響子さんが声をかけた。
「はい。そうします」
今日はお言葉に甘えさせてもらおう。怖いけどはやく帰ってネットの反応を見ないと、気になってなにも手につかない。