冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
画面の中の彼は淡々と答える。
『さあ。知りません。先を予測する能力や過去から学習する能力は、AIにすら簡単に持たせることが可能です。しかし人間は能力に個体差がありますから、その点、間違った選択をする場合もあり得るかと』
アナウンサーは笑顔で「なるほどぉー」と返すが、確実に困っている。
『正常な判断ができなくなってしまう……ということですかね。瀬川さん、そんな世の既婚男性にひと言ガツンとお願いします!』
『とくになにも。私は他人の結婚には興味がありません』
『あちゃー! いつもの瀬川節ですね! ……ところで、瀬川さん自身は不倫なんてしないですよね? 奥さま一筋ってことでいいですか?』
機械のような彼の結婚事情をいじるしかなくなったアナウンサーと、いじられている自覚はなく質問に答え続けるコメンテーターは、今日も噛み合っているようで噛み合っていない。
『はい。妻以外に、とくに興味はありません』
しかし不覚にも画面の彼の答えにときめいた私は、顔を横に向けてうっとりと見つめた。