冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
話がループしている。「本当に結婚するんですか!?」と騒ぎだす店長たちに「三澄さんがはいと言えば」とうなずく瀬川さん。これではらちがあかない。
私たちはテーブル席に座って話すことになった。店長は混ぜ始まった生地を放置するわけにはいかず仕込みに戻ったが、引き続きこちらをちらちら見ている。
響子さんは紅茶を淹れてくれ、なぜか自分の分も注いで母のように私の隣に座った。
彼に番組できちんと喋らせているアナウンサーのやり方を思い出し、質問をひとつずつぶつけていくことにする。
「瀬川さん。一緒に撮られてしまって私も責任は感じています。でも、なぜいきなり結婚したいんですか? つまみ食い報道ではイメージダウンになるから?」
彼は優雅に紅茶をひと口すすった。
「いえ、世間からのイメージダウンは気に留めていません。しかし取引先への影響に少々懸念があります」