冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「瀬川さん。私、パンケーキ屋を開店するという夢があるんです。ですから社長夫人のお役目なんてできません」

彼はうなずき、「なるほど、夢」とつぶやくと、口もとに手を当てながら考え始める。
きっとバカだと思われているだろう。途方もない夢だと。うまくいくかわからない夢など持ち続けるより、才能あふれる瀬川さんの社長夫人になった方が幸せに暮らせると誰もが考えるはず。

わかってる。大学の同期が有名企業から内定を貰うなか、私ひとりがパンケーキ屋の店員になると決めていた。親にも友人にも変わり者だと言われてきたし、もう慣れてる。

「三澄さん。ひとつ聞きたいのですが」

起業の大大大先輩として、甘さを指摘されるのだろう。

「……はい」

「俺ならその夢を今すぐに叶えてあげられます。ですが、それは自分で成し得たい夢ですか? 俺が金を出して三澄さんをオーナーにしたら、夢を叶えたことにはならない。そういうことでしょうか?」

……え。
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