冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「芽衣ちゃん。前向きに考えてみたら?」
店長も背中を押す。
今ちょうどグラグラしている状態だから、これ以上声援を送られると首を縦に振ってしまいそうだ。
「でも……」
断る理由を必死に探すが、客観的にはもうなくなってきている。一番のコンプレックスだったパンケーキ屋について応援してくれると言うし、おそらく瀬川さんと結婚すると言ったら両親も大喜びするだろう。
引っ掛かっているのは愛情がない、その一点だけだ。
「三澄さん。俺が分析するならですが、結婚した方が夢が叶う確率は高まると思います」
「……えっ」
彼は痛いところを突き始めた。
「経営のノウハウはありますから助言くらいはできます。ブレインを使っても構いません」
「そ、それではもうほぼ瀬川さんの力を借りることになってしまいますから……」
「直接的な助言は不要だと言うのであれば、三澄さんが研究できるようトロイメライや有名店のパンケーキを食べに連れて行きましょうか」
魅力的すぎる提案が胸に突き刺さり、パンケーキ研究に明け暮れる最高の毎日が頭に浮かぶ。