冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「え……なんですかそれ」

「証人として秘書ふたりに名前を書かせた。あとはもう、俺たちが書いて出せばいい」

「いやいやいや! さすがに両親への挨拶もなしに結婚するのはダメですよ!」

「それは違う。結婚は両性の合意のみに基づき──」

「そういうことじゃなくて!」

なんて言うんだっけ、こういうの。頭が堅い? 融通が利かない? 杓子定規?
もっとこう──そう、ロボットみたい!

この人と夫婦になることに一気に不安がわき上がったが、価値観が違うことは結婚を申し込まれたときからわかっていたはずだと自分に言い聞かせる。

彼は大きな声を出した私を黙って見つめていた。それは少し、私の心が読めないことへの不安を秘めているようにも見える。

「……えっとですね、瀬川さん。たしかに結婚は本人同士だけでできますが、相手はこんな人ですよーってお知らせをした方が、周りは安心すると思うんです」

どんな言葉なら伝わるだろうか。きっとわかってくれるはず。瀬川さんはロボットじゃないんだから。
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