冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「私が瀬川さんと結婚することを、先に両親に伝えたいんです。いいですか? ご面倒だとは思うんですけど」
気持ちが高ぶり、彼が膝に置いている手にそっと触れた。
冷たい手。手が冷たい人は、心はあったかいと誰かが言っていた気がする。
すると彼は手を裏返し、私の手と指をからめてきた。
「……面倒なわけない」
微かに灯る明かりのようにあたたかさを帯びた彼の返事に、胸が高鳴る。
「瀬川さん……」
どうしてそんな瞳で見つめるの? ときどき勘違いしてしまいそうになる。
不思議と私を捉えて離さない瞬間があり、それはランダムに、予測不可能に向けられる。
冷徹さの中に潜む情熱を、私がひとり占めしているように感じてしまう。
誰かに見つめられただけでこんなに胸が高鳴るのは、初めてだ。