冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
第4話 見せたくない
それから入籍までは、ジェットコースターのように進んでいった。
瀬川さんは約束通りに私の実家へ挨拶へ来てくれて、両親はひっくり返るくらいに喜んだ。
『ちょっと芽衣! どうしてあなたが瀬川さんとお付き合いできたの⁉』
『いったいうちの娘のどこを気に入ったんです?』
生活感溢れる居間に彼を通し、百円ショップの来客用スリッパを履かせた上に、実の娘を前にして失礼すぎる質問をぶつけてくる。
瀬川さんとはとくに打ち合わせもしておらず、私はそわそわしながら返事を任せた。
『落とし物を拾っていただきました。私のひと目惚れです』
瀬川さん。その嘘はもう、厳しいと思うんだけど……。
いつかテレビでしていた返事とまったく同じ説明だ。彼はこれから先ずっと「ひと目惚れ」でゴリ押しするつもりらしい。
私なんぞにひと目惚れするというなら、毎週共演しているあのアナウンサーへ先に惚れていなければおかしいだろう。