冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「あ、あっ……んっ……あっ……」
焦らされたせいでするんと彼を受け入れ、密着すると甘い熱で意識が朦朧とした。
そこにガツンと目を覚まさせるような彼の動きが私を揺さぶる。
「瀬川さんっ……瀬川、さんっ……」
獣のように腰を揺らす彼にどうしていいかわからず、必死でしがみついた。
彼はそんな私を抱きしめて、耳を咥えながら、「どうにかなりそうだ」と訴える。
瀬川さんが冷徹だなんて、この状況を見ていったい誰が思おうか。
妻を愛し尽くそうとする彼は情熱的で、人間味にあふれている。
そう、偶然にも彼の〝かりそめの妻〟となった私は、戸惑いながらも、瀬川さんを確実に好きになっている。
べつに好きになってもいいのだ。正式に籍は入っているし、私たちの関係に制限はない。
合理的な瀬川さんなら「それはちょうどよかった」ときっと受け止めてくれる。
しかし私は、それでは足りなくなっている。
もっと。もっと。
かりそめなんかじゃなくて。
胸を張って妻だと名乗れる存在になれたら素敵なのに。
瀬川さんはきっと私でなくてもよかったのだ。
あの日居合わせた人とならば、誰とでも結婚しただろう。
そう、それはちょうど、今から二か月前の〝あの日〟の出来事──。