冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「あ、あっ……んっ……あっ……」

焦らされたせいでするんと彼を受け入れ、密着すると甘い熱で意識が朦朧とした。
そこにガツンと目を覚まさせるような彼の動きが私を揺さぶる。

「瀬川さんっ……瀬川、さんっ……」

獣のように腰を揺らす彼にどうしていいかわからず、必死でしがみついた。
彼はそんな私を抱きしめて、耳を咥えながら、「どうにかなりそうだ」と訴える。

瀬川さんが冷徹だなんて、この状況を見ていったい誰が思おうか。

妻を愛し尽くそうとする彼は情熱的で、人間味にあふれている。

そう、偶然にも彼の〝かりそめの妻〟となった私は、戸惑いながらも、瀬川さんを確実に好きになっている。

べつに好きになってもいいのだ。正式に籍は入っているし、私たちの関係に制限はない。
合理的な瀬川さんなら「それはちょうどよかった」ときっと受け止めてくれる。

しかし私は、それでは足りなくなっている。

もっと。もっと。
かりそめなんかじゃなくて。
胸を張って妻だと名乗れる存在になれたら素敵なのに。

瀬川さんはきっと私でなくてもよかったのだ。
あの日居合わせた人とならば、誰とでも結婚しただろう。

そう、それはちょうど、今から二か月前の〝あの日〟の出来事──。


< 6 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop