冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす



パーティーは都内の高級ホテル『プリンス・パウロ』のホールを貸しきって行われる。
初めてのお披露目で緊張するが、私などが妻だと知ってガッカリされることは想像に難くないため、できるだけ存在感を消して参加しようと画策していた。

瀬川さんはドレスを買うと申し出てくれたが、私なんぞがドレスだなんて気恥ずかしいし、自前のクリーム色のワンピースにジャケットを見せたら「それで問題ない」と言ってくれたため、これに決めた。
これなら目立たず、存在感なく参加できる。

彼はあまり外見や服装にこだわらないのかもしれない。
彼自身は社長さんだからいろいろ体裁の整った身なりをしているが、私には私の好きなものを着ればいい、というスタンスのようだ。

……少しは気にしてほしかった。

かの有名な『プリンス・パウロ』に足を踏み入れると、私の地味な格好はその空間に調和せずに浮きまくっていたのだ。
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