冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

歴史ある教会のような堂々たるプリンス・パウロのエントランスを前にしたときから、嫌な予感はしていた。

隣を歩く瀬川さんは普段ともテレビとも違うダークグレーのスーツを着ており、スタイルのよさも端正な顔のつくりともマッチして、すれ違う人たちは次々に目を奪われていく。

私は彼の影か、もしくは女中のような感じで、逆に「なんかいる」と不自然な存在感を放っていた。

すれ違うゲストには奥さまらしき女性を連れている人もいて、皆こぞって華やかなドレスを身につけていた。
こういう場に慣れているとわかる素敵な着こなし、そして立ち振舞い。
知らない世界に心が踊る感覚もあるが、今は瀬川さんに恥をかかせるのが怖くて気が気でない。

すでに周囲はチラチラと私に視線を向けてくる。

「行くぞ、芽衣」

「は、はい……」

瀬川さんが私が隣にいて、恥ずかしくないのだろうか。
< 62 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop