冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
歴史ある教会のような堂々たるプリンス・パウロのエントランスを前にしたときから、嫌な予感はしていた。
隣を歩く瀬川さんは普段ともテレビとも違うダークグレーのスーツを着ており、スタイルのよさも端正な顔のつくりともマッチして、すれ違う人たちは次々に目を奪われていく。
私は彼の影か、もしくは女中のような感じで、逆に「なんかいる」と不自然な存在感を放っていた。
すれ違うゲストには奥さまらしき女性を連れている人もいて、皆こぞって華やかなドレスを身につけていた。
こういう場に慣れているとわかる素敵な着こなし、そして立ち振舞い。
知らない世界に心が踊る感覚もあるが、今は瀬川さんに恥をかかせるのが怖くて気が気でない。
すでに周囲はチラチラと私に視線を向けてくる。
「行くぞ、芽衣」
「は、はい……」
瀬川さんが私が隣にいて、恥ずかしくないのだろうか。