冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
「旦那さまを呼んできますね」
ドキッと胸が鳴る。ひとりにされ、私は姿見の前で足の指を丸めて待った。
瀬川さんはきっと興味なんてないだろう。変な格好をしていても気にしないのだから、着飾っていても同じことだ。
それでもどんな反応をするのか、期待で胸が膨らんでいく。
「こちらです。奥さまとてもお綺麗ですよ」
自信満々のスタイリストが、瀬川さんを案内する声が聞こえてくる。
私も彼女の仕事が素晴らしすぎて、「早く見て瀬川さん」と心の中でうなずいた。
「芽衣。開けていいか」
仕切られた白いカーテンの向こうの彼に、か細く「どうぞ」と返事をする。
音を立てて開けられ、一段低い場所に瀬川さんが立っていた。
対面しても彼の表情は変わらない。ただ時が止まったように見つめていて、初めて会ったあの日を思い出した。