冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
第5話 一番かわいい
それから一週間が経った。
瀬川さんのマンションで同居を始め、私はなに不自由なく暮らしている。
宣言通り注文してくれたグリドルとエスプーマも先日届いた。
パーティーでの彼のひと言は、今でも心の擦り傷のように残っている。
一瞬でも自信を持ってしまった自分が恥ずかしい。
かわいい、似合ってる。そんな言葉が貰えるんじゃないかと期待して、目を輝かせて彼の前に立ったのだ。
着替える前の残念な格好の私も、ワインをかけた女性にプロポーションの悪さを暴かれた私も、似合いもしない背伸びしたドレスで帰らされた私も、全部彼にとっては変わらないのに。
かりそめ妻がなにをしたって、瀬川さんの視界には映らないのだろう。
「……うん、もう気にするのはやめやめ! こういうときはパンケーキを作ろっと」
エプロンを着け、材料をパントリーの棚からキッチンに出した。
小麦粉も卵も、新鮮でいいものを揃えてくれている。
瀬川さんはPCや小さな機器に囲まれた書斎で仕事をしており、邪魔をしないようにゆっくりと作業を始める。