冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす

「……どうした?」

瀬川さんの冷たく低い声がかけられると涙腺はさらに崩壊し、手のひらに顔を押し付けて隠す。

「なんでもないんです。すみません。気にしないでください」

「なにがあった。悪い、俺がなにかしたのか?」

「なにもないです。瀬川さんは関係ないですから。私の問題です」

「泣いている理由を聞かせてくれ。気になってなにも手につかない」

困らせているとわかってもどうしようもなくて、顔を隠したまま首を横に振る。

「本当に大丈夫なんです……」

つらくて言えない。ビジネス妻でもこんなに叩かれているのだと知ったら、一緒にいたくなくなるかもしれない。
さすがの瀬川さんも引いてしまうかも。

今度こそ、こんな女を妻にするんじゃなかったって後悔するんじゃないかな。
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