冷徹社長はかりそめ妻を甘く攻め落とす
問いただしていた声がしなくなり、違和感を覚えて指の隙間をうっすらと開けた。
すると瀬川さんは枕の下に隠したはずの私のスマホを手に、親指でスクロールをしているのが見えた。
「ダメッ……!」
恥ずかしい気持ちでいっぱいになり、彼の手からスマホを取り返そうと飛び付くが、手首を掴まれると力が抜けていった。
目が合い、おそらく最上級に崩れているであろう私の顔も露わになる。
もう情けなくてたまらなくて、「うぇ……」と子供のような声が出て、さらに視界が潤んでいく。
もう、なにもかもグチャグチャだ。
フッと爽やかな香りがし、ベッドが音を立てた。潤んでよくわからない視界の中で、たしかに景色が変わる。
唇が温かく触れたかと思うと、熱い息が漏れた。
「……え」
ひと筋涙が落ちると視界が戻る。今、なにが起きたのだろう。元の位置に戻っていた瀬川さんを前に、さっきのは夢だったかと思考が停止する。
しかしそれをかき消すように、彼はもう一度私にキスをした。