思っていたのと 違うのですか‼︎

 ではなくて‼︎私、聞いてませんよ‼︎家を守るだけじゃないんですか‼︎

それ以前に、今ここで発表する事ではないんじゃないんですか‼︎

 と、旦那様を見上げて見ても、知らぬ存ぜぬでこちらを見向きもしない。

抗議をしたくても、「おめでとう」「これで一安心ですな」と拍手の中では言っても声はかき消されてしまうはず。

 とりあえず、一先ず置いといて、この状況を乗り切らないと‼︎


 「上手くやったわね。まぁ、いいわ。そのまま上手くやっていきなさい」

 どういうアプローチで抗議すべきか、シミュレーションを繰り広げている中、私以上に着飾った姉が嫌味とも励ましとも受け取れる言葉を私にかける。

「さすが先輩ですね。義弟として、微力ながらお手伝いさせて頂きます」
 
手伝うって職種違うでしょうが!
はっ、もしかして仕事以外でのお手伝いですか‼︎女の手配ですか?アリバイ工作ですか?
手段を教えて下さい。

「義弟はお前じゃなくて、俺だけどな」
「それは無理です」
「私も憧れの智さんと家族になれるなんて」

なんて談笑してないで下さい。


 初々しい家族を遠くから眺めていると、

「2人が結婚したら役職を智に譲って、2人でゆっくりしようかと思っているんだよ」

 お父様が私の手を握りながら「智の事を頼んだよ」と微笑む。

 私、何も聞いてません‼︎一から説明して下さい‼︎

「わ、私」と声を出せば、遠くにいたはずの旦那様が私の肩をひく。

「あの場で発表する必要はなかったんじゃないか」
「なぁに、正式発表じゃないんだ。これからそうしていくっていうか宣言だよ。身内も関係者も勢揃い、いっぺんに済んでいいじゃないか」

 これが世に言う【狸親父】なのか。この言葉の裏にどんな言葉が隠れている。
< 12 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop